明治元年(1968年)、初の日本人集団移民として横浜港からハワイにやってきた150人*の「元年者(もの)」から150年。
今年はハワイでさまざまな「日系移民150周年記念」イベントが行われます。
*153人という説もあり。
そのひとつとして開催されたのがこの特別上映会。
50年前の1968年、「日系移民100周年記念」として制作された映画です。
野村芳太郎監督、後年は(松本)清張映画のイメージが強いですが(ですよね?)、スターもの、コメディ、お涙頂戴もの……と、実に多種多様な映画を撮られていたことを改めて学びました。
上映館はカハラ・シアター。カハラ・モールの中にあります。
映像や音響設備が最新というわけではありませんが、気軽に足を運べる、地元の愛され映画館です。
行き慣れているローカルの人々は目にも留めませんが、出入口付近には、ハワイな風景に懐かしのハリウッドスターが描かれている、こんな絵も。
特別上映会といっても、そこはローカルの人々。映画館での楽しみ方はアメリカン。
ポップコーンとドリンクは欠かせません。
別売りのアラレを買って、ポップコーンと混ぜて食べるローカルも。
実は上映当日、映画館の事情で当初予定していたより広い部屋に変更になったのです。
これはまことに残念なことでした。というのは前売り券はソールドアウト。当日券はなし。
「行きたかったのに、チケットが売り切れで」という声を何件か耳にしていたので……初めからこの部屋だったら、もっと多くの人が観ることができたのに~。涙。
気を取り直して、『夜明けの二人』、始まりです!
松竹映画のオープニング富士山の前に、「ハワイ日本人移民百年祭記念映画」という文字が現れました。
橋幸夫さんがスクリーンに登場すると、日本からハワイにいらしていた橋幸夫ファンクラブの方々、そしてローカルのお客さんたちが、「きゃあ~っ♡」と。
実は過去、日本人歌手としては初のファンクラブがハワイに作られていたのです。ハワイ公演も何度か行われていて、ハワイにも橋幸夫さんファンは少なくありません。 映画の見どころはもちろん、主人公であるプロカメラマンの卵、橋幸夫さんと、ハワイの日系3世、黛ジュンさんの恋の行方、なんですが。
同時に50年前のハワイの風景が見られる! というのも大きなポイント。
(過去のハワイスクープの記事「昔の写真/1967年のオアフ島の写真です。」と同じ頃ですね)
たとえば……
ワイキキのメインストリート、カラカウア・アベニュー。手前右手は当時のインターナショナル・マーケットプレイス。
現在は一方通行になっていますが、ここでは普通に両面通行です。(一通になったのは1971年です)
「世界最大のショッピングセンターよ」と、日系ガール役の生田悦子さんが橋幸夫さんに説明する、1959年*にオープンしたアラモアナ・センター(当時はアラモアナ・ショッピングセンター)。
50年前にすでに世界最大級だったんですね。
*1959年、ハワイはアメリカ準州からアメリカ50番目の州に昇格。
今日(こんにち)とは全然違うようでいて……
当時の白木屋。(黛ジュンさんが、白木屋内の美容院で働く美容師さん役でした)
ここ、2017年10月に、新たなフードコート「ザ・ラナイ」として改装オープンしましたが、2016年3月までは旧白木屋でした。
(新白木屋の記事はこちら)
そしてこの映像は、2016年に閉店するまでの白木屋の姿とほとんど同じ。
近年どんどん変わりつつあるホノルルですが、映画の中には、当時とそれほど変わりない場所も登場します。いまは空港の名前になっている、ハワイが誇る日系二系、故ダニエル・K・イノウエ上院議員も、ご本人役として登場。お若い!
(右がイノウエ上院議員。左は2011年に亡くなった長門裕之さん。こちらもお若い!)
議員は1924年生まれ。2012年12月にお亡くなりになる前に、「ハワイと国家のために力の限り誠実に務めた。まあまあ、できたと思う」と、話されたと伝えられます。
映画の中でも、「日本に恥じない仕事をしています」と、おっしゃっていました。
背景は、パンチボウルの丘(国立太平洋記念墓地)。
「ヨーロッパ前線で一緒に戦った戦友の多くはここに眠っています」と。
イノウエ上院議員はアメリカ陸軍日系人部隊、第442連隊戦闘団の生き残り兵士。
ヨーロッパ前線で右腕を失い、それまで目指していた医者の道を諦め、政治の道に進んだのでした。
ハワイの日系人や日系社会、ハワイの観光紹介を兼ねた映画ということで、当時の日系人気スポットも映し出されます。
前述の生田悦子さんは、当時チャイナタウンにあった「THE NAKAMURA HOTEL」のお嬢さん役。
なのでそのホテルが出てきたり。
黛じゅんさんは、1921年創業の料亭「NATSUNOYA TEA HOUSE(夏の家ティーハウス)」のお嬢さんという設定。
上の画像がNATSUNOYA TEA HOUSE。現在も引き続き営業しています。
カメハメハ大王像、イオラニ宮殿(下)、ヌウアヌパリ展望台、(おそらく)タンタラスの丘、ワイキキシェルなどもキッチリ登場。
主人公たちは、ホテルでルアウショー(ハワイアンエンターテイメントショー)も見物。
映し出されるファイヤーダンスは、いま見るものとまったく変わりのないレベル。
日系社会の紹介ということで、パリ・ハイウェイにある本派本願寺別院や、アラモアナ・センターからそんなに遠くないマキキ聖城キリスト教会なども見せてくれます。
オアフ島だけでなく、なんとマウイ島、ハワイ島、カウアイ島も出てきます。そして各島の観光スポットも情報正しく紹介。
たとえばマウイ島のイアオ渓谷。
ラハイナの町。
ハワイ島のハレマウマウ火口では、恋に破れたと勘違いした日系ボーイの竹脇無我さんが飛び込んで自殺を図ろうとしますが、橋幸夫さんに止められます。
火山の女神ペレについても登場人物の口から語られます。
黒砂海岸では、橋幸夫さんと黛ジュンさんのロマンチックな場面も。
日系人の町といわれたヒロもさくっと出てきました。下の写真は数年前のものですが、当時とあんまり変わっていないような……。
カウアイ島のシダの洞窟。当時はツーリストが洞窟(といっても実際には窪みに近いですが)に入れました。
現在では危険だということで、洞窟を、洞窟下から眺めることになっています。こんなシブいスポットも紹介されていて、感動しました。
ここはハワイ伝説の小人族メネフネが一夜で作ったといわれる養魚池。メネフネ・フィッシュポンド。
アメリカ映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』や『タイムマシン』のロケ地になっています。
ここは現在も当時とほとんど変わっていません。
シニアにとっては懐かしの、そして若い世代にとっては見たことのないハワイが見られる貴重な映画です。
ストーリーや登場人物の思考回路については、現代と比べると、いささかご都合主義といいますか、突っ込みどころもありますが。
映画の中では、日本人移民がサトウキビ畑でしてきた苦労。
先に移民した日本人男性のために、写真でお見合いをして、海を渡った日本人の「写真花嫁」のエピソード。
そうしたことも説明されます。
また、ワイキキの主要ホテルを日本の会社が買収したことを日系記者役の長門裕之さんの口から語らせ、そんな大きな力を持つようになった自国にもっと誇りを持つべきだと、言わせてみたり。
あ、映画の中では橋幸夫さんや黛ジュンの歌も聴けます! ちょっとしたミュージカルふうの場面も。
映画が終わると、来ハなさっていた橋幸夫さんが、撮影時のあれこれを話してくださいました。
映画のハワイロケは約2週間だったそう。
ハワイの人々はどこへ行っても大歓待してくれたそうです。
ハワイにはこれまで30回以上いらしているとのことで、あれこれをユーモアを交えながら語ってくださいました。
最後はファンの方と気軽に握手も。(握手攻めでした!)
今後またハワイで同映画上映の機会があるかも……と聞きましたので、チャンスがあれば、ぜひご覧になってください。
(それまで待てない! という方は、日本ではDVDにもなっているようです)
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